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歯科医師が教える歯の健康のための【歯のコラム】

column

2018.09.15

顎関節症は自然に治る?放置する危険性は?

口を開け閉めしたときに顎の関節がギシギシいったりカクッと音がする症状のことを、顎関節症(がくかんせつしょう)と言います。

自然に治ることがほとんどなので、「顎関節症は大したことがない病気」と考えている人も多いのではないでしょうか。それは正しい認識とはいえません。仮に自然に治らないような顎関節症だったら、放置していると顎の形が変形し、最悪、顎の骨を削る大きな手術が必要になるかもしれません。そこまで悪化しなくても、顎の骨の音を鳴らすことが癖になってしまったり、精神的なストレスを抱えることもあります。

自分で「痛みがないから大丈夫だろう」と判断するのではなく、顎関節症の症状や、リスクをしっかり把握しておきましょう。

顎関節症とは?どのような症状があるのか

顎関節症は顎の動きに支障が出る病気です。 歯医者の診断基準は次のとおりです。

  • 口を大きく開け閉めしたときの痛み
  • 顎の筋肉の痛み
  • 顎の関節の雑音(捻髪音 ※髪の毛をつまんでねじったときのようなチリチリする音)
  • 口を指2本分開けられない
  • 顎の筋肉の発熱
  • 安静にしているときにも痛む
  • 口を開けたり閉めたりするときにカクッというクリック音がなる
  • 口を開けたときに、顎が右にずれたり、左にずれてまっすぐに開けられない
  • よく顎が外れる

この条件のすべてに合致しなくても顎関節症と診断されることはあります。 特に「口を指2本分開けられない」という症状は重症のサインです。

歯医者が「軽症なので様子をみましょう」と言うこともある

診断の結果、歯医者が「顎関節症かもしれないが軽症なので様子を診ましょう」と言うことがあります。 この場合、治療もせず、薬も処方されません。 しかし治ったわけではないので、経過観察となります。 もし痛みが強くなったら、再び診る必要がある、ということです。

対処法をいくつかご紹介します。

  • 安静にする、可能な限り口を開けないようにする 顎関節症の症状が見られ、大きく口を開けたときにカコッという音がする場合は、その音がするところまでで、口の開け閉めを行いましょう。
  • 痛みがある場合、口を小さく開けるようにする 痛みがない範囲で食事をしたり、話すようにしましょう。
  • 下あごを前にずらし、指を使って大きく口を開ける 痛みがあり、どうしても口が開けられない場合下あごを前にずらし、そこから口を開けると、音が鳴らずに口を開けることができます。そうすることで痛みがなく口を開けられる場合もあります。 また下あごを前にずらし、指を使って大きく口を開けます。そうすることで関節円板が元の位置に戻り、口を開けられるようになることがあります。注意点は逆に痛みが出る可能性もあります。そうなった場合は、歯医者さんで症状をお伝えし、相談しましょう。
  • コットンや綿を前歯で噛み、前後に動かす 力を入れないように、コットンや綿を前歯で噛み前後で動かすことで、凝り固まった筋肉を緩めることができます。また、筋肉は緩みますが、症状が酷い場合は、痛みが出ることもあるため注意しましょう。
  • 顎に熱を持っている場合は冷やす 顎に熱を持っている場合は、冷えピタや保冷剤などで冷やしましょう。
  • 痛い場合は痛み止めを飲む
  • 固い食べ物は避ける 固い食べ物ではなく柔らかい物を食べ、顎に負担がかからないようにしましょう。どうしても食べることが難しい場合は、ビタミンゼリーなどで栄養を補給しましょう。

また歯科医によっては、セルフマッサージを進められることがあるかもしれません。安静にすることが一番ではありますが、症状の軽減が期待できるマッサージを紹介します。

  1. 右手で首の左側の後ろを30回もむ(逆も同じように行う)
  2. 両手の人差し指と中指で左右のこめかみを押しながら小さな円を30回描く
  3. 両手の人差し指と中指で左右の顎の関節部分を押しながら小さな円を30回描く

会社員の方であれば、1~3を1セットとして、仕事を始める前と帰宅する前に2セットずつ行うとよいでしょう。 これで治ることもあります。

1と2は頭に血液を送る太い動脈を刺激して血行をよくする狙いがあります。 3は、顎関節を支えている筋肉をリラックスさせる狙いがあります。 筋肉には「筋膜」という組織が覆っていて、マッサージすることで筋膜の癒着を解きほぐすことができます。

「ぱぴぷぺぽ」発音やラジオ体操も試してみよう

また発声練習も効果があるとされています。 「ぱぴぷぺぽ」をはっきりと1分間言うだけで、顎の筋肉の緊張がほぐれます。

さらに運動不足を自覚している方であれば、毎日1回、ラジオ体操を行うのも効果が出るかもしれません。 顎の関節の不具合が、全身の骨格の変調から起きているかもしれないからです。

下顎の関節頭が変形することもある

下顎の上部に間接頭と呼ばれる関節を構成する骨の一方にある、でこぼこした関節面があります。通常は上顎の骨に対して下顎の間接頭というものが間接の下にはまっています。その間に「間接円盤」というクッションの役目を果たすものがあり、回転運動と滑走運動を行っています。この間接円盤が前に引っ張り出されることでカクッという音が鳴るのです。また間接円盤が前に出ると、骨と骨とが当たっている状態になるため、下顎の間接頭が吸収されてしまいます。吸収されると顎が外れやすくなったり、顎が偏位することで、顔が曲がったように見え左右非対称に見えることにも繋がります。

マッサージなどで症状が治まれば問題がありませんが、それでも症状が続いたり、または悪化したときは放置すると危険です。

ストレスを生むことも

顎関節は耳に近いので、顎関節症が重症化して関節音が大きくなると精神的なストレスになることもあります。

仕事や勉強に集中できない、イライラするといった変調をきたすこともあります。

顎関節症が顎変形症の前兆だったらとても危険

顎関節症が恐いのは、その症状が顎変形症の前兆かもしれないからです。

顎変形症は顎の骨の形が異常だったり、上顎と下顎の大きさのバランスが崩れていたりする病気です。間接頭が偏位することで、顎が右にずれたり、左にずれたり、後ろに下がったりします。以下のような症状が出る場合があります。

  • 四十肩、ヘルニア、頭痛に繋がる 顎が左右にずれることで顔が変形してしまいます。それは噛みあわせにも影響してくるため、姿勢が悪くなり、肩こりしやすくなったりします。
  • 気道が確保しづらく猫背になる 左右両方の下顎が吸収された場合、下顎全体が後ろに下がってしまいます。そうすると気道が狭くなり気道が閉塞し、呼吸しづらくなるため、呼吸をしやすくするために、下顎を前に持ってくるように猫背になってしまいます。猫背は姿勢が悪くなる原因の一つでもあり、さらには上記で示したような腰痛、全身の痛みへと繋がっていきます。
  • 突然死の原因になる 左右両方の下顎が吸収され気道が確保しづらくなると、睡眠時無呼吸になる場合があります。それは突然死にもなります。
  • 通常の矯正で治らない場合は、顎の骨を削るという外科矯正を行う可能性もある。全身麻酔下で行う大きな手術になります

まとめ~軽症のうちに歯医者に診てもらいましょう

顎関節症は軽く扱われてしまいますが、実は油断できない病気です。 顎関節が正常に機能しない状態になれば、姿勢が悪くなり、全身の筋肉の不調を起こすことにも繋がってしまいます。例えば股関節が機能せず歩けなくなりますし、指の関節が動かなければ文字を書くことができなくなってしまいます。

そのように、顎関節に支障が起きれば、全身の不調、姿勢の悪さ、もしくは運動機能の低下にも繋がります。そして気道が閉塞することでの猫背や、睡眠中の無呼吸にも繋がります。今話題になっている突然死の可能性も出てきます。

だからこそ、顎関節症状の治療をすることにより、気道を通常に戻したり、嚙み合わせを治すことで、全身のバランスを治すことにも繋がります。結果生活の質を上げることができるのです。顎の不調は軽症であれば一番治りやすいため、今のうちに歯医者へ行きましょう。

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