2024.07.08
歯のすり減りや顎関節症…無意識な歯ぎしりの治し方
歯ぎしりや食いしばりといった口腔習癖は、虫歯や歯周病と比べるとあまり問題視されていない方も多くいらっしゃいます。
しかし、歯ぎしりの癖を放置してしまうと、歯はもちろん噛み合わせや顎の健康にも支障をきたしてしまうことがあります。
今回はそんな歯ぎしりのメカニズムを知り、治し方を考えていきましょう。
寝ている時の「ギリギリ」「カチカチ」は全て歯ぎしりです
歯ぎしりとは、主に寝ている間に歯を擦り合わせたり強く噛み締めたりする行為のことを指します。
ご自身では気づきにくいですが、「家族に歯の音を指摘された」「起きた時に顎が疲れている」などの理由から「もしかして歯ぎしりをしている?」と発覚することもあるでしょう。
歯ぎしりというと「ギリギリ」という音を連想する方が多いと思いますが、それ以外にも「カチカチ」と噛み合わせる音が目立つ場合も歯ぎしり対策が必要です。
まずは歯ぎしりの種類と原因、セルフチェックの方法を紹介していきます。
口腔内の悪習癖(ブラキシズム)の種類
日本人の7割以上が歯ぎしりなどの悪習癖「ブラキシズム」を抱えていると言われます。
歯ぎしりには大きく分けて3つの種類があります。
1つ目は、上下の歯を強く擦り合わせる「グラインディング」と言われるものです。寝ている時に「ギリギリ」と不快な音が鳴る、一般的な歯ぎしりのことです。
2つ目は音が出ないタイプの歯ぎしりで、「クレンチング」と言います。クレンチングは上下の歯を強い力で噛み締める癖で、食いしばりに分類されます。
3つ目は「タッピング」と言われるタイプの歯ぎしりです。タッピングは、ものを噛むように上下の歯を「カチカチ」と噛み合わせる歯ぎしりで、グラインディングやクレンチングと比べると症例数は少ないと言われています。
歯ぎしりをしてしまう原因とは
歯ぎしりの原因は、ひとつだけではありません。
歯ぎしりが起こりやすいのは基本的に就寝中ですが、起きている間のストレスなど心理的な要因が大きく関わっているとも言われています。
ストレスが蓄積している状況で筋肉の緊張が続くと、寝ている間に歯ぎしりをしてしまうというわけです。
そのほかにも、噛み合わせが悪いことで歯ぎしりをしやすくなってしまったり、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が原因となって歯ぎしりをしてしまったりすることも多く見られます。
それ以外にも、飲酒や喫煙、過度なカフェインが発端となり歯ぎしりが悪化するケースもあるので生活習慣には注意が必要です。
歯ぎしりのセルフチェック方法
- 起きた時に顎や歯が痛い
- 起きた時に、顎が疲れているような気がする
- 頭痛や肩こりが続いている
- 歯が欠けたり割れたりすることがある
- 歯がすり減って短くなっていると感じる
- 歯の溝や凸凹が無くなっていると感じる
- 歯がしみたり揺れたりすることがある
このような症状がある場合は、もしかすると歯ぎしりをしてしまっているかもしれません。
悪化する前に歯科医院に相談するなど、適切なケアを始めるようにしましょう。
歯ぎしりによるお口や顎への健康リスク
無意識のうちの歯ぎしりは、強い痛みや出血などの症状が出にくいことから、虫歯や歯周病、お口のケガと比べると「大した問題ではないだろう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし歯ぎしりは、歯はもちろんお口全体の環境や顎、ひいては全身に大きな負担をかけてしまう行為です。
実際にどのような健康リスクがあるかを理解した上で、正しい改善方法に繋げていくようにしましょう。
歯ぎしりがお口のトラブルへ与える影響
歯ぎしり自体が虫歯や歯周病を起こすということはありません。
しかし、すでに歯周病を発症している場合や虫歯が進行している場合は、歯ぎしりによって病気の進行が加速することがあると言われています。
また、歯ぎしりによって歯がすり減ると歯並びが悪くなったり噛み合わせが乱れたりと、お口全体の問題にも繋がってくるでしょう。
歯ぎしりが歯に与える影響
歯ぎしりによって歯がすり減るということは、それだけ健康な歯の寿命が短くなってしまうということです。
歯ぎしりで歯に摩耗が生じることを「咬耗」といい、咬耗は知覚過敏のリスクを高めるとも言われています。
また、長期間ダメージを受けた歯は割れたり折れたり抜けやすくなったりとさまざまな問題が起こりやすくなります。
さらに、歯の根っこにも負担がかかってしまうことで炎症を起こしたり、根っこ部分に亀裂が入ってしまったりと、あらゆるトラブルの原因になってしまいます。
歯ぎしりが顎に与える影響
歯ぎしりが続いている状況は、顎にとっても大きな負担を与え続けているということです。
歯ぎしりをするときの力は、普段の噛む力より非常に強炒め、顎の関節にダメージを与えてしまうのです。
顎の関節に負担がかかり続けると、次第に顎関節症のような症状が現れ始めます。
お口を開けると顎が痛い、スムーズにお口が開かない、パキパキと顎から異音がするといった症状がありましたら、早めに顎関節症の治療を行うようにしましょう。
お口以外の健康にも影響を与えることがある?
歯ぎしりは、歯や顎だけの問題ではありません。
実際に歯ぎしりや食いしばりで悩んでいる方の多くは、慢性的な頭痛や肩こりといった症状に悩まされています。
さらに悪化すると、目眩や耳鳴り、睡眠に支障が出てしまうということもあります。
こうした症状によってストレスを感じると、その緊張でさらに歯ぎしりがひどくなってしまうという悪循環につながってしまいます。
こうなってくると、単なるお口のトラブルでは済まなくなってしまうでしょう。
日常生活に支障が出る前にきちんと歯ぎしりを改善していくことが大切です。
気になる歯ぎしりの改善方法について
「歯ぎしりを早くなんとかしないと!」と思っていても、いざ治療を受けるとなるとどのような方法があるのか知らないという方も多いのではないでしょうか。
虫歯治療であれば患部を削って詰め物や被せ物をしますし、歯周病であればお口のケアや歯周外科治療がありますが、歯ぎしりはどうでしょうか。
状況によっては歯にアプローチする治療もありますが、多くの場合は歯にダメージを与えないよう保護をする方法が用いられます。
歯ぎしりを治すためには、歯科医院での治療とセルフケアが欠かせません。
まずはどのような方法が自分に適しているか、また、どのような理由で歯ぎしりをしてしまっているかを考えてみましょう。
就寝時のマウスピース「ナイトガード」を使う
就寝時の歯ぎしりによる歯の咬耗や顎への負担を減らすためには、専用のマウスピースを用いるという方法があります。
ナイトガードと呼ばれる、就寝時に装着するマウスピースを使用することで歯ぎしりから歯を守ることができます。
マウスピースを用いた歯ぎしりの治療はスプリント治療と言われ、保険が適用となるため多くの方に採用されています。
「寝ている間の歯ぎしりを指摘された」「起きた時に歯や顎が痛い」という方は、ぜひナイトガードによるスプリント治療を検討されてみることをおすすめします。
歯並びや噛み合わせの治療を行う
歯並びや噛み合わせに問題があることで歯ぎしりが起こっている場合には、矯正治療を行うことで歯ぎしりを緩和できる可能性があります。
マウスピース矯正やワイヤー矯正を用いて歯を正しい位置へ移動させ、お口全体の噛み合わせを整えることで過度な歯ぎしりは改善されることがあります。
また、お口を閉じた時に上下の歯が重なり合ってしまう開咬などの不正咬合は、歯ぎしりによって歯に大きな負担を与えやすいため、矯正治療で改善することが大切です。
「歯並びが気になっている」「部分的に噛み合わせが悪く、歯が重なりやすい」といったお悩みがある方は、矯正治療に力を入れている歯科医院へ相談されてみるのもいいかもしれません。
根本的な原因を取り除くことが大切です
歯ぎしりを根本的に治すためには、歯ぎしりをしている原因を明確にして取り除く必要があるでしょう。
例えば、過度なストレス状態が続いている場合には、ストレス発散方法を見つけてリフレッシュすることが大切です。
飲酒や喫煙など日常生活の中で歯ぎしりのリスクを高めているものがあれば、そういった内容を見直してみるのもいいかもしれません。
歯ぎしりの原因が歯並びにある場合は、早めに歯科医院で歯並び改善について相談してみるようにしましょう。
まとめ
歯ぎしりは、普段のストレスや日常生活、歯並びなどさまざまな要因によって引き起こされる悪習癖です。
放置していると歯や顎、全身の健康にも影響を及ぼしてしまう可能性があります。
歯ぎしりを治す方法としては、ナイトガードを用いる治療が主流ですが、まずは原因を明確にして「歯ぎしりをしないようにする」という点が大切です。
健康な歯を維持していくためにも、歯ぎしりは決して放置せず、早め早めの改善に取り組んでいきましょう。