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2026.09.15

血糖値が気になる方へ|歯周病と糖尿病の相互関係と改善法を解説

血糖値が気になる方へ|歯周病と糖尿病の相互関係と改善法を解説

健診で血糖値と歯ぐきの両方を指摘された方へ

 

朝起きたときの口の中の粘つき、歯みがきのたびに滲む血。そこにHbA1cの数値の話まで重なると、どこから手をつければよいのか迷ってしまいますよね。歯周病と糖尿病は、互いに影響し合う関係にあると報告されています。片方だけを見ていても、思うように状態が改善しにくい場合があるのです。この記事では、その仕組みを専門用語をかみ砕いて整理し、歯科医院での検査や治療の流れ、忙しい毎日でも続けやすいセルフケアまでを順にお伝えします。

 

この記事の要点まとめ

 

  • 歯周病と糖尿病は互いの状態に影響を及ぼし合う関係性が示唆されています。
  • 歯周病の慢性炎症は動脈硬化や誤嚥性肺炎など全身へ波及する可能性があります。
  • 歯科での基本治療や日々のセルフケア、内科との情報共有が管理の一助となります。

 

歯周病と糖尿病が互いに悪化を招く相互関係のメカニズム

歯周病と糖尿病が互いに悪化を招く相互関係のメカニズム

 

歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまった細菌のかたまり(プラーク)をきっかけに、歯を支える骨や組織へ慢性的な炎症が広がっていく病気とされています2。痛みが出にくいまま進むため、気づいたときには進行していた、というケースも珍しくありません。

 

この歯周病と糖尿病は、一方通行ではなく双方向に影響し合う関係にあると考えられています3。どちらか片方だけを追いかけていても、状況が動きにくいことがある。その理由を、2つの角度から見ていきましょう。

 

歯周病の炎症物質がインスリンの働きを妨げる理由

 

歯ぐきに炎症が起きているとき、体の中では何が起こっているのでしょうか。炎症を起こした歯周組織では、TNF-αをはじめとする炎症性物質(サイトカイン)がつくられると報告されています。

 

やっかいなのは、これが歯ぐきの中だけで完結しない点です。歯周ポケットの内側は毛細血管が豊富で、しかも潰瘍のように傷んだ状態。そこから炎症性物質が血流に乗り、全身をめぐっていくと考えられています3

 

血糖を下げるホルモンであるインスリンは、細胞に「糖を取り込みなさい」と指示を出す役割を担っています。ところが炎症性物質が増えると、この指示の受け取りがうまくいきにくくなる。これがインスリン抵抗性と呼ばれる状態です。分泌はされているのに効きが鈍る、鍵は差さっているのに扉が開きにくい、そんなイメージでしょうか。

 

結果として、血糖コントロールが乱れやすくなるとされます。進行した歯周病では、歯ぐきの炎症面積が手のひらほどの広さに相当するとも表現されます。決して小さな範囲の話ではありません。

 

高血糖状態がお口の免疫力低下と歯周組織の破壊を招く流れ

 

今度は逆方向の流れです。血糖値の高い状態が続くと、体の防御力にいくつかの変化が現れると指摘されています。

 

まず、細菌と戦う白血球(好中球)の働きが鈍くなりやすいこと。お口の中には常に細菌がいますが、通常は免疫が抑え込んでいるもの。その抑えが緩めば、歯周病菌が増えやすい環境になります。

 

高血糖は毛細血管にも影響します。血流が滞れば、歯ぐきに酸素や栄養、免疫細胞が届きにくくなり、傷んだ組織の回復にも時間がかかりがちです。さらに、余分な糖とタンパク質が結びついてできる終末糖化産物(AGEs)が組織にたまると、炎症反応がいっそう強まると考えられています。

 

唾液の分泌量が減り、口の中が乾きやすくなる点も見逃せません。唾液には細菌を洗い流す働きがあるため、乾燥はプラークの停滞につながります。朝の口の粘つきが気になり始めたら、お口の環境が変化しているサインとして受け止めたいところです2

 

こうして高血糖が歯周病を進めやすくし、進んだ歯周病が血糖コントロールを乱していく。この循環を、どこかで断ち切る発想が求められます。

 

糖尿病だけではない!歯周病が全身の健康に及ぼす影響とリスク

 

歯周病との関わりが指摘されているのは、糖尿病だけではありません。お口は全身への入り口でもあり、そこで起きた慢性炎症はさまざまな臓器に波及し得ると考えられています23

 

動脈硬化や心疾患・脳血管疾患と歯周病菌の関係

 

歯周病菌やその産生物が歯周ポケットから血管内に入り込むと、血管の内壁で炎症が起こることがあるとされています。血管壁にはコレステロールなどが沈着してアテローム(粥腫)と呼ばれる隆起ができますが、炎症が加わるとこの形成が進みやすくなると指摘されています3

 

これが動脈硬化です。血管の弾力が失われ、内側が狭くなっていきます。心臓を養う冠動脈で起これば狭心症や心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞につながる可能性があります。歯周病の状態と心血管疾患の発症との関連についても、これまでにさまざまな研究が報告されています1

 

糖尿病そのものにも、網膜症・腎症・神経障害といった合併症が知られており、動脈硬化性の疾患もそこに含まれます。歯周病は、この合併症のリスクに関わる要因のひとつとして位置づけられるようになってきました。血糖と歯ぐき、その両方に目を向ける意味はここにあります。

 

誤嚥性肺炎や認知機能への影響など意外と知られていない全身リスク

 

もうひとつ、年齢を重ねるほど気にかけたいのが誤嚥性肺炎です。飲み込む力が弱まると、唾液や食べ物が誤って気管に入ることがあります。このとき唾液中の細菌量が多いと、肺で炎症を起こしやすくなると考えられています。お口を清潔に保つことが、肺の健康にも関わってくるわけです2

 

認知機能との関連についても研究が進んでいます。慢性的な炎症が脳に影響を及ぼす可能性、そして歯を失って噛む回数が減ることによる脳への刺激の低下。この2つの経路が指摘されており、歯の数と認知機能の関係を調べた報告も出ています1

 

さらに妊娠中の女性では、歯周病と早産・低体重児出産との関連が示唆されています。炎症性物質が子宮の収縮に関わる可能性が考えられているためです。

 

つまり歯周病への対応は、歯を守るためだけでなく、全身の健康を長く保つための土台づくりでもあるということ。

 

血糖コントロールと歯を守るための治療法と日々のセルフケア

血糖コントロールと歯を守るための治療法と日々のセルフケア

 

ここからは、実際に何をすればよいのかという話に進みます。仕事が忙しくても取り組める範囲から始めること、これが継続への近道です。

 

歯周基本治療によるプラーク・歯石除去がもたらす全身への好影響

 

歯科医院ではまず、歯周ポケットの深さを1本ずつ測る歯周組織検査とレントゲン検査で、現在の状態を把握します。そのうえで行うのが歯周基本治療。歯の表面や歯ぐきの中に付着した歯石とバイオフィルムを、スケーラーなどを使って取り除いていきます。

 

炎症の原因である細菌の量が減れば、歯ぐきから血流へ流れ込む炎症性物質も少なくなると考えられています。歯周治療の後にHbA1cの数値の変化がみられたとする研究報告もあり、歯周病の管理が血糖コントロールを支える一助になり得るとされています3。ただし変化の程度には個人差があり、内科での治療に置き換わるものではない点は押さえておきたいところです。

 

当院では、歯周病を細菌レベルから捉える「根本的歯周治療」に取り組んでおり、歯科用マイクロスコープや超音波スケーラー、エアフロー、Er:YAGレーザーなどを状況に応じて用いています。また、患者さまのお口の健康を維持していただくために歯科衛生士専用フロアを設け、メンテナンスと歯周病の予防に力を入れています。

 

内科と歯科の連携体制と受診時に共有すべき情報

 

糖尿病の治療を受けている方が歯科を受診する際は、次の情報をお伝えください。

 

  • お薬手帳:服用中の薬の種類と量を確認するため
  • 直近のHbA1cと血糖値:体調を把握する目安として役立ちます
  • かかりつけ内科の名称:必要に応じて情報を共有するため
  • 低血糖を起こしたことがあるか:処置時間や来院時間の調整に関わります

 

抜歯などの外科的な処置を行う場合、血糖の状態によっては感染への配慮や、内科の担当医への照会が必要になることがあります。歯科から内科へ、あるいは内科から歯科へ紹介状(診療情報提供書)をやり取りするのが、いわゆる医科歯科連携です。

 

また、空腹のまま長時間の処置を受けると低血糖の可能性が高まるとされています。食事と服薬のタイミングを整えてからのご来院をおすすめしています。ご予約時に事情をお伝えいただければ、時間帯の調整もご相談いただけます1

 

忙しい日常でも無理なく続けられる歯間ブラシやフロスの活用法

 

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを十分に落としきれないことがあります。プラークコントロールの質を上げる鍵は、補助的な清掃用具にあります2

 

  • デンタルフロス:歯と歯の接触が強い部分に。前歯や若い方の歯間に向いています
  • 歯間ブラシ:歯ぐきが下がって隙間ができた部分に。サイズ選びが大切で、無理なく通る太さを歯科衛生士に選んでもらうと扱いやすくなります

 

毎食後すべて完璧に、と考えると続きません。1日1回、夜だけでもフロスや歯間ブラシを通す。このくらいを目標にするほうが現実的でしょう。テレビを見ながら、入浴中に、といった具合に生活の流れへ組み込む工夫も役立ちます。

 

出血があると避けたくなりますが、炎症のある部位ほど出血しやすいもの。強くこすらず、やさしく数日続けるうちに落ち着いてくる場合もあります。判断に迷うときは、自己流で続けず一度ご相談ください。定期的なメンテナンスの間隔は、お口の状態に応じて1〜3か月を目安に設定していきます。

 

よくある質問

 

Q1. 歯周病から全身の病気につながることはありますか?

 

A. 歯周病は口の中だけの問題にとどまらず、全身の健康とも関わりがあると考えられています。糖尿病のほか、動脈硬化性の心疾患・脳血管疾患、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産などとの関連が指摘されています。

 

ただし、歯周病だけがこれらの病気や状態を引き起こすわけではありません。さまざまな要因が関係するなかで、歯周病もそのひとつとして関わる可能性があると考えられています。

 

Q2. 歯周病と糖尿病は連携して治療するものですか?

 

A. 互いに影響し合う関係があるため、内科と歯科が情報を共有しながら進める形が望ましいとされています。受診の際にお薬手帳や直近の検査数値をご持参いただくと、状態に合わせた計画を立てやすくなります。必要に応じて紹介状をやり取りすることもあります。

 

Q3. 早めに歯科を受診したほうがよいサインはありますか?

 

A. 朝起きたときの口の粘つき、歯みがき時の出血、歯ぐきの腫れや赤み、口臭が気になる、歯が長く見えるようになった、歯がぐらつく。こうした変化が目安になります。痛みがなくても進行することがあるため、気になる点があれば早めのご相談をおすすめします。

 

Q4. 1型糖尿病でも歯周病との関わりはありますか?

 

A. 1型・2型を問わず、血糖コントロールの状態が歯周組織に影響し得ると考えられています。1型糖尿病は発症年齢が若い場合が多いため、小児期・青年期からの定期的な歯科受診とプラークコントロールが大切になります。

 

Q5. 歯周病治療にはどのくらいの通院が必要でしょうか?

 

A. 進行の程度によって幅がありますが、検査と歯周基本治療で数回、その後に再評価を行う流れが一般的です。進行が進んでいる場合はさらに追加の処置を検討します。仕事の都合がある方は、まとめて時間を取る方法など通院計画をご相談いただけます。

 

参考文献

 

1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/

2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth

3. 日本臨床歯周病学会 公式サイト https://www.perio.jp/

 

この記事の監修医師
安岡デンタルオフィス院長
長野 繫彦
スタディーグループ歯庵、大阪SJCD 会員、COI(国際口腔インプラント学会) 会員、学術団体JAID 会員

目標を持つことが人の努力を支えると考え、歯科医療においても患者様の価値観に合った目標を共に作り上げることが大切です。痛みを治すだけでなく、人生を豊かにする歯科医療の実現が私の目標です。監修者プロフィール詳細を見る⇒

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