2017.06.01
「無痛治療」と「笑気麻酔」のちがいについて
歯医者で行う無痛治療として、おもに静脈内鎮静法(無痛点滴麻酔)、全身麻酔、笑気吸入鎮静法(リラックス麻酔法)があります。
笑気麻酔は、無痛治療の一環なのです。通常、歯医者さんの治療でも麻酔は使用しますが、患部だけの局所麻酔がほとんど。痛みは感じませんが、意識があるため歯を削られている不快感や音などは感じるので、恐怖感が残ります。
一方、無痛治療の場合は麻酔を投与することで意識のない状態にするので、こうした恐怖感を感じずに治療を受けられるのです。静脈内鎮静法(無痛点滴麻酔)は、麻酔薬を点滴で打って麻酔をかける方法です。うっすらと意識は残っていますが、ほとんど眠っているような状態になります。治療に伴う振動や痛みなどを感じずに治療を受けることができます。
一方、全身麻酔は長時間の治療が必要なときに使用します。静脈内鎮静法が効きにくい、障害があって歯科治療ができない、インプラントや口腔外科的な施術が必要な場合などです。
笑気吸入鎮静法は、笑気ガスを吸引してリラックス状態にして治療を行う方法です。笑気ガスというとなんだか楽しい雰囲気ですが、正式には「亜酸化窒素(N2O)」といいます。この笑気ガスを吸ったからといってゲラゲラ笑ってしまうような楽しい気分になるわけではなく、ガスを吸った患者さんがなんとなく引きつったような笑顔のような表情になることから「笑気ガス」と呼ばれるようになったそうです。
歯科治療での笑気麻酔は、30%以下の低濃度笑気を70~80%の高濃度酸素と混ぜて使用します。笑気麻酔の場合、治療中も意識があり、医師との会話もできます。麻酔中に受けた治療の記憶も残っているのが、その他の無痛治療と違う点です。
無痛治療に向いている人、向いていない人
無痛治療が向いているのはこんな方です
●歯科治療にトラウマがある人(歯科治療恐怖症)
●パニック障害がある人
●口の中に異物が入るとすぐに「オエッ」となってしまう人(嘔吐反射)
●ありとあらゆるものに不安感がある人(全般性不安障害)
一方で妊娠中の女性や、アレルギー、呼吸器疾患を持つ方などは笑気麻酔などの無痛治療を受けられないことがあります。
麻酔が痛いからイヤという方に
そもそも、麻酔を打つための注射が痛いという声もあります。最近では、麻酔技術の発達によって、痛みを感じない麻酔も増えています。
●極細の注射針を使う
●麻酔薬を温めて体温との温度差をなくし注入時の痛みを和らげる
●歯ぐきにゼリー状の表面麻酔薬を直接塗る
●自動麻酔注射器を使って注入スピードをコントロールして痛みを減らす
麻酔を始め、歯科技術は年々進化しています。患者さんの負担を減らすために、痛みを感じない治療機器もたくさん登場しています。患者さんの中には、「最近の麻酔はぜんぜん痛くない」と言う方もいます。痛みがイヤという方は、歯医者を選ぶときに最新の治療法を取り入れている歯医者を選ぶとよいでしょう。
そもそもなぜ歯医者が怖いのか?
無痛治療や局所麻酔で物理的に痛みをとることもよいのですが、根本に帰って「なぜ歯医者が怖いのか」ということを考えてみましょう。
それは主に「何をされるかわからないから怖い」という恐怖心に基づいていませんか。
「痛くされるんじゃないか?」といった恐怖心によって痛みに敏感になったり、恐怖心が増大している可能性があります。これは、歯科医とのコミュニケーション不足や、信頼感が足りていないためといえます。
きちんとしたコミュニケーションをとって患者さんの気持ちを尊重し、不安感や恐怖を取り除くのも、無痛治療の一環です。最近は、院内の雰囲気を明るくして、恐怖心を感じさせないように工夫している歯科医院も増えていますが、それでも不安感が強いようなら、かかりつけ歯医者さんに相談してみましょう。
その上で、「これからどんな治療をするのか?」「次に何をするのか?」という治療内容をきちんと説明してくれる、安心できる歯医者さんであれば、麻酔に頼らずとも恐怖心が薄らぐはずです。