2024.10.28
インビザラインで「やらなきゃよかった」と後悔してしまう事例と失敗しないための対策
インビザラインとは
薄くて透明な医療用プラスチックでできたマウスピースを使用して、歯並びを整えていく矯正装置です。マウスピース矯正にも色々な種類がありますが、当院ではマウスピース矯正の中でも特に精密な矯正が行えるインビザラインシステムを採用しています。
インビザラインは世界で1400万人以上の方が矯正治療を行っており、装着していても周囲に気づかれることはほとんどなく、金属アレルギーの方にも対応、食事や歯磨きの際には外しておくことができ、矯正に伴う痛みが従来のワイヤー矯正等の4分の1程と少ないのも特徴です。
メリット
- 審美面
装着していても周囲に気付かれることはほとんどありません。 - 金属アレルギー
ワイヤー矯正が難しい方でも対応可能です。 - 清掃性
ご自身で取り外し可能で、食事時は外すことができます。食事や歯磨き時は外して清掃することもできます。 - 痛みが少ない
ワイヤー矯正等に比べると痛みが少ないです。
デメリット
- 適応症例がある
歯列の関係で難しい症例は対応できない場合があります。 - ご自身での自己管理が必要
マウスピースを一日の中、食事以外の時間で22時間装着して頂く必要があります。また装着していない場合は矯正治療が計画通り進まないことがあります。 - ワイヤー矯正に比べて矯正力は弱い
インビザライン治療できない人は?
インビザライン治療を受診したくても歯並びや、口腔内の状況によっては不可能な場合があります。インビザライン不適応の症例もご紹介します。
重度の叢生
叢生(そうせい)とは、顎のサイズに対して歯が並ぶ十分なスペースがなく、デコボコになっている状態のことです。歯と歯が重なりが激しい重度の叢生は、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足していたり、インビザラインが苦手とする平行移動ができないため治療できない場合があります。インビザラインではなく、ワイヤー矯正が向いていることもあります。
重度の受け口や出っ歯・多くの場合が骨格に問題があるため
重度の受け口や、出っ歯などは、叢生と同じくワイヤー矯正で治療する方が良いことがあります。また、骨格の状態によっては、顎の骨を切るなどの外科手術が必要になることも抜歯することや外科手術が必要になることもあります。
虫歯や歯周病がある
虫歯や歯周病は放置して治るわけではありません。虫歯や歯周病がある状態で矯正を始めてしまうと、さらに症状が進行し、悪化します。矯正の治療中に虫歯の治療で、歯を削ったり抜歯するとマウスピースが合わなくなってしまいます。また歯周病の症状で、歯がグラグラした状態だとマウスピースの圧力に耐えられません。そのため、矯正治療をスタートするためには、虫歯や歯周病の治療が終了する必要があります。
インプラントがある
- フルインプラントの場合
- インプラントの埋入ポジションが悪く天然歯の移動を阻害する場合
- 患者様が上部構造のやり替えを拒まれた場合
金属製の人工歯根が埋め込まれており、固定されているため、動かすことができません。上部構造のやりかえを前提としていることや、前歯部の部分矯正であれば、治療できる可能性があります。
「やらなきゃよかった」と後悔する人が多いのはなぜ?
歯が動いていなかった
1枚のマウスピースで歯が動く量は約0.25mmで、1ヶ月で最大1mm程度までしか動かせません。動いたと感じられるまで個人差がありますが、おおよそ2か月〜6か月程度かかると言われています。また「後戻り」を防ぐためにも、保定期間はリテーナーと呼ばれる保定装置を装着ましょう。歯並びが元に戻ってしまうことのないように、適切な保定装置と保定装置のメンテナンスにより、手に入れた新しい笑顔を維持しましょう。
噛み合わせが悪くなった
歯が予定した位置に動かず噛み合わせが悪くなることや、出っ歯や八重歯などは改善したけれど、口の中心が上下で合わなくなる場合があります。しかしこの状態は、歯の移動により一時的に噛みあわせが悪くなったと誤解している可能性があります。不安に感じることがあれば、矯正担当のスタッフに相談してみましょう。
理想の仕上がりにならなかった
インビザラインはマウスピースを被せる矯正治療であるため、細かい調整が苦手です。ワイヤー矯正より矯正力が弱いため思っていたより歯並びがよくならなかったと感じる方もいます。口腔内の状況によっては、インビザラインよりも、ワイヤー矯正の方が良いこともあります。
想像以上に歯を削られた
顎の骨が小さかったり、歯が大きいことで歯並びが悪くなっている場合、歯を並べるためにスペースを作る必要があります。そこで抜歯の代わりにディスキング(IPR)という歯の表面を、0.2〜3mmほど削る処置をしてから矯正を開始することがあります。しかし、削りすぎると知覚過敏になったり、歯を移動させるのに時間がかかったりするリスクがあることが、後悔する原因の一つとなります。歯科医師の技術にも左右されるため、医院選びや治療前のコミュニケーションが大切になります。
歯茎が下がってしまった・歯根が露出した
矯正治療では、マウスピースにより歯槽骨に負荷をかけ、骨の吸収と再生を利用して歯を動かします。無理な力を受け、歯茎にマウスピースが当たってしまうことで歯茎が下がってしまったり、歯根が露出することがあります。そうすると歯が染みる原因になりかねません。
歯ぐきが下がると、口元が痩せて老けて見えたり、顔の印象が変わってしまうことがあります。
ワイヤー矯正よりも高額であった
矯正治療で、ワイヤー矯正かインビザラインか費用で迷っている場合、インビザライン矯正はワイヤー矯正よりも費用が高くなることがあります。ワイヤー矯正(全体矯正)が60〜90万円に対して、インビザライン(全体矯正)が70〜100万円審美目的でもある矯正治療は、保険が適応されず自由診療であることや、3DスキャンやAIなど、最先端の技術を使用していることも費用が高くなる理由です。マウスピースを紛失された場合は、片顎1シート¥4.400(税抜価格¥4,000)が必要となります。また治療の進行具合によってマウスピースを作り直した場合、追加費用が発生することもあり、費用が高くなります。
手入れが面倒だった
インビザラインで矯正治療を行う場合、自己管理、手入れを行う必要があります。
一日の中で22時間装着して頂く必要があり、間食を取る場合や、水以外の飲み物を飲む場合に取り外さなければなりません。水以外の飲み物を飲むと、マウスピースと歯のすき間から水分が入り、虫歯や歯周病の原因にもなってしまいます。
装着していない時間が多いと、矯正治療が計画通り進まず、治療結果にも大きく影響します。
インビザライン治療における失敗の原因
マウスピースの装着時間を守れなかった
インビザラインは1日22時間以上装着し、食事と歯磨き時のみ外していただくように、お伝えしております。
「装置が自分で外せる」メリットがある反面、「サボることができる」ため、歯科矯正の効果が低くなってしまうデメリットがあります。嘔吐反射が激しくアライナーの装着が困難、ポリウレタンアレルギー、着脱回数が多くなる形(飲食業、食品開発などのお仕事)など様々な事情があるかと思いますが、治療期間が延びてしまうことがないよう、歯科医院でご相談ください。
定期的に通院が出来なかった
矯正を始めた頃は1ヶ月に1回の通院、慣れていけば、2か月に1回程度の通院が、一般的な通信頻度です。インビザライン矯正は、ご自身で進めていくことがほとんどですが、歯並びの状態やマウスピースと現在の歯並びが合っているかを、定期的に診てもらいましょう。
医師の技術が低かった
インビザライン矯正の治療において、マウスピースを作成するのは機械ですが、治療計画や、アタッチメントの形状・数など医師が判断する項目が多くあります。
理想の歯並びを実現するためには、患者様の口腔内の状況を判断し、歯の動きや抜歯の必要性などを考慮しながら治療を進めていくなど、高度な知識と経験が必要です。
失敗しないための対策
マウスピースの装着時間・方法を守る
- 装着時間を徹底して守る
1日22時間以上装着、食事と歯磨き時のみ外します。 - アライナーチューイーを使用してフィットを高める
アライナーチューイーとは、歯とアライナーをフィットさせるためのアイテムです。新しいアライナーに交換してはじめの3日間は10分、それ以降は5分を目安に装着のたびにかみましょう。
医師の指示を受け、正しい方法で装着しましょう!
マウスピースを清潔に保つ
マウスピースを清潔に保つために守っていただきたい3つのことをご紹介します。
- むし歯や歯周病の予防のため、歯磨きは丁寧に行ってください。歯が動いてくると、歯と歯の間に食べかすがつまりやすくなります。フロスや歯間ブラシを使用して、口腔内を清潔に保ちましょう。
※外食などですぐに歯磨きできない場合、口をすすいでアライナーを装着してください。 - 歯磨きをする際は、同時にアライナーも洗浄してください。流水と柔らかい歯ブラシで汚れ(アライナーに付着した歯垢など)を落としてください。マウスピース洗浄剤をあわせてご使用いただくとより好ましいです。
- 食べものや飲みものに制限はありませんが、アライナーを装着したままで色の濃いものを飲むとアライナーに着色します。糖分の含まれるものや酸性の飲み物(コーラ、スポーツドリンクなど)はむし歯の原因になりますので、アライナーを装着したまま飲まないでください。雑菌や汚れによって虫歯になってしまうと歯を削るなど治療が必要になります。
歯医者を慎重に選ぶ
患者様が納得した形で治療を進めていくためには、治療前のカウンセリングやお悩みなどしっかりと相談することが大切です。また技術力の高い歯医者にきちんと治療計画を立ててもらうことが、治療の成功にも繋がります。
良い歯医者かどうか判断するために
- ホームページから情報収集する
- 保有資格や正しい知識を有しているかを確認する
- インビザライン治療の実績があるかどうか
インビザラインの実績を確かめる一つの方法として、歯科医院の年間の症例数に応じて認定されるインビザラインプロバイダーのステータスランクというものがあります。当院ではインビザラインの症例が年間150〜400ある場合に与えられる「ダイアモンド・プロバイダー」を受賞している医師も在籍しておりますので、安心してご相談ください。
インビザラインについてよく理解する
- 時間をかけて治療していくということを認識する
- 装着する時間を確保しておく
- 場合によっては理想の状態にならなかったり、歯茎後退などの症状が起きることも認識しておく
患者様ご自身の情報収集はもちろんですが、歯科医院で気になることがあれば気軽に相談しましょう。不明点があるまま治療を進めることは、後々違和感が発生してしまいます。
まとめ
本記事では、インビザラインの特徴と、失敗する原因と対処法についてご紹介しました。
インビザライン治療をやらなきゃよかったと後悔する人は多くいますが、失敗事例をしっかり理解したうえで治療を始めることで対処することができます。矯正することで噛みあわせが良くなったり、全身疾患の原因を予防することにも繋がります。
当院では、矯正治療がスタートしてからは、月1回のメンテナンスを行っております。月1回の矯正チェックもあり、矯正治療が計画通りに進行しているか矯正Dr/矯正DHがしっかり確認させていただきます。また矯正治療終了後は保定期間に入るため、その後の治療もサポートいたします。満足して治療を終えられるよう、私たちも全力を尽くします。