2024.10.08
保険適用の白い歯・CAD/CAM冠(キャドキャム冠)|奥歯も対応
一昔前は、虫歯や歯の欠けの治療として銀歯が一般的でした。しかし、今では保険適用で白い素材でできた被せ物を入れられることをご存じでしょうか?
この白い素材でできた被せ物「CAD/CAM冠」は一部の場合を除き、一番奥の歯には適用できませんでしたが、2023年12月の保険改定からは、すべての歯で適用できることになりました。
この記事では、CAD/CAM冠の特長、保険改定により使用可能となった新しいCAD/CAM冠の種類、銀歯やセラミックなど他の被せ物との比較表もご紹介します。
これから虫歯や歯の欠けの治療を予定している方はもちろん、今ある銀歯を白い歯に変えたいとお考えの方は、ぜひ最後までご確認ください。
CAD/CAM冠(キャドキャム冠)とは
CAD/CAMとは、コンピュータで設計・製造を行う技術のこと。この技術を使って、レジンにセラミックの微粒子を加えたハイブリッドレジンを材料に作る被せ物をCAD/CAM冠と言います。
CAD/CAM冠のメリット
白色で、銀歯より目立たない
使用する部位にもよりますが、数色が用意されているため、自分の歯に近い色を選べる利点があります。
金属を使用していないので金属アレルギーの心配がない
CAD/CAM冠の素材であるハイブリッドレジンはセラミック(陶器)とプラスチックからできています。金属を一切含んでいないので、CAD/CAM冠の装着で金属アレルギーを引き起こす心配がありません。
また、銀歯から溶けだした金属イオンによるメタルタトゥーのリスクもなく、歯や歯茎の黒ずみを避けることができます。
かみ合う歯への負担が少ない
ハイブリッドレジンは天然歯の硬さに近い特長があります。そのため、適用した歯と噛み合わせる歯がすり減ったり、割れたりするリスクが、銀歯よりも少なくなります。
虫歯の再発リスクを低減する
CAD/CAM冠は、カメラで口腔内を撮影し、そのデータを元にコンピュータ上で詰め物や被せ物を設計。それを専用の装置がハイブリッドセラミックのブロックから削り出し作製します。
精密な作製が可能で、銀歯よりも歯にぴったりとくっつくので、細菌が入り込む隙間ができにくく、虫歯の再発リスクが低減します。
保険適用のため、自由診療に比べ費用が抑えられる
白い歯にするためには、今までは自由診療であるセラミックの素材の被せ物が主な選択肢となっていました。しかし、CAD/CAM冠がすべての歯で保険適用となったことで、自由診療に比べて安価に白い歯の治療を選択できるようになりました。
CAD/CAM冠がすべての歯で保険適用に
CAD/CAM冠は2014年から一部の歯で保険適用となった被せ物です。その後、対象範囲が拡大され、前歯から小臼歯(4番目・5番目の歯)までは無条件で保険適用可能となりました。
大臼歯(6番目・7番目の歯)では、「金属アレルギーであること」などの条件下で適用されてきましたが、2023年12月の改定により、保険適用対象が大幅に拡大。すべての歯でCAD/CAM冠を保険適用で入れることができるようになりました。
部位ごとに使えるCAD/CAM冠用材料
CAD/CAM冠を保険適用で使う場合、被せる歯によって使用できる材料が決まっています。ここではCAD/CAM冠用材料の基準(機能区分)をご紹介します。
CAD/CAM冠用材料 | Ⅰ・Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ |
対応する部位 | 小臼歯 | 第一・
第二大臼歯 |
前歯 | すべての大臼歯 |
色数 | 5色~ | 3色 | 4色~ | 1色のみ |
CAD/CAM冠用材料Ⅰ~Ⅳの製造メーカーは複数あり、メーカーごとにいくつかの色を製造しています。一方、CAD/CAM冠用材料Ⅴを製造しているメーカーは1社のみで、色も1色のみとなります。
CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)とは
今回新しく保険適用になった「CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)」は大臼歯専用の材料で、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で出来ています。
PEEKには、
- 高靭性(力が加わった時に壊れにくい)
- 高い安全性と生体親和性(拒絶反応や炎症を起こしにくい)
- 低吸水性(吸水性が低いため、口腔内でも長く安定した性能を維持できる)
- 耐熱性が高い(熱い食べ物や飲み物に触れても変形しにくい)
といった特長があります。
また、強度が高いため被せ物を薄くすることができる=歯をたくさん削らなくてもよいことも大きなメリットです。その一方で、現在はアイボリーの一色しかなく、透明感がないため、見た目が劣るデメリットもあります。
第一・第二大臼歯で使われていた「CAD/CAM冠用材料(Ⅲ)」の素材であるハイブリッドレジンよりも、壊れにくく、高い安全性を誇ります。
2024年6月から保険適用となったエンドクラウンとは
今までの大臼歯用のCAD/CAM冠では、歯の高さがない場合はしっかり支えられず、外れやすい欠点がありました。そのため、大臼歯の高さが足りない方やスペースが少ない方は、CAD/CAM冠を用いた治療を行うことができませんでした。
しかし、新しく導入されたエンドクラウンは、土台のようなものが付いたCAD/CAM冠で、歯の高さがない場合でも外れにくい形となっています。
またエンドクラウンには
- 歯の削る量が少ない
- 歯の根っこの感染リスクが低い
- 来院回数が少なくなる
など、患者様の負担が少なくなるメリットもあります。
その一方で、
- 横からの力に弱く、歯ぎしりする人には適用でない
- 神経が残っている歯には保険適用できない
- 審美性が劣る
などのデメリットもあります。
CAD/CAM冠をおすすめしないと言われる理由
銀歯に比べて、歯を多く削らなくてはいけない
CAD/CAM冠は強度がそれほど高くないため、銀歯や自由診療のセラミックに比べて厚みが必要になります。そのため、歯を削る量は多くなります。神経が残っている歯の場合は、削り過ぎると痛みが出るため、CAD/CAM冠を適用できないケースもあります。
時間が経つと、劣化しやすい
CAD/CAM冠に含まれているプラスチックは、時間経過で黄色く変色し、審美性が低下する可能性があります。また、摩耗にも弱く、長く使うと形や表面の質感が損なわれることがあります。
傷付きやすく割れやすい
上記に加え、プラスチックは傷がつきやすい素材でもあります。表面が傷つくと、審美性が低下するだけでなく、汚れがつきやすくなります。
また、徐々に歪みが出てきて、割れたり、外れやすくなったりすることもあります。
適用できないケースがある
CAD/CAM冠は銀歯やセラミックに比べて強度が高くないため、強い力がかかる歯や、歯ぎしり・食いしばりがある場合には適用できません。
以上のような理由から、CAD/CAM冠ではなく、強度が高く、経年劣化にも強いセラミックをおすすめする歯科医院も多くあります。
銀歯・CAD/CAM冠・セラミックの比較
銀歯 | CAD/CAM冠 | セラミック | |
費用 | 保険適用 | 保険適用 | 自由診療 |
見た目 | 金属で目立ちやすい | 白い素材で銀歯より目立ちにくい。
ただ、一番奥の歯で使用されるPEEKは透明感のないアイボリーで目立つ。 またセラミックよりは色数が少ないので、セラミックよりは目立つ |
色数が豊富で自分の歯に近い色を選択でき、最も自然な見た目を再現できる可能性が高い |
金属アレルギー | 金属が含まれており、将来、金属アレルギーを引き起こす可能性がある。
経年により金属が溶け出し、歯や歯茎に変色を及ぼす可能性がある |
金属を使用していないため、金属アレルギーを引き起こす可能性がほぼない | 金属を使用していないため、金属アレルギーを引き起こす可能性がほぼない |
虫歯の再発 | 長く使用していると歯と銀歯の間に隙間ができて、細菌が入り込み、虫歯が再発するリスクが高まる | プラスチック製で傷が付きやすく、傷に汚れが残りやすい。
経年劣化で割れたり欠けたりするほか、歪みが生じる可能性があり、虫歯の再発リスクは少なくはない |
歯にぴったりとくっつき、ある程度の硬度があることから表面の美しさがキープされ、汚れがつきにくい。
虫歯の再発リスクはゼロではないが、他の被せ物に比べて低い |
被せ物の黄ばみなど見た目が気になるなら、セラミック治療
セラミック治療とは、欠けたり損なわれた歯に対して、詰め物や被せ物としてセラミック素材(陶器)を使用する治療法です。
セラミック治療の最大のメリットは、自然で美しい見た目です。元の歯と同じような色合いになるため、並んでも違和感がありません。CAD/CAM冠も白い素材ですが、色数が限定されているので、セラミック治療ほど自然な見た目を再現するのは難しいのです。
またプラスチックを含んだCAD/CAM冠は、使っている間に黄ばんできたり、表面が劣化して汚れが付きやすくなったりすることを避けられません。しかし、セラミック素材は経年劣化しにくい素材ですので、長い期間、白さと美しさをキープすることができます。
お手入れしやすく、清潔を保ちやすいセラミック素材は、虫歯や歯周病予防の観点からも優れた素材です。健康な口腔内を保ちやすいことは、将来的な医療費の削減にもつながります。
以上のことから、お仕事などで人に接する機会が多く、口元の印象を大事にされている方は、セラミック治療を検討してみてはいかがでしょうか。
当院のセラミック治療については以下のリンクもご参考ください。
江坂で保険適用のCAD/CAM冠をするなら、安岡デンタルオフィス
今回の記事では、保険適用で白い歯を叶えてくれるCAD/CAM冠についてご紹介しました。
CAD/CAM冠を作製するには高い技術力が必要で、すべての歯科医院で取り扱っているわけではありません。
当院は、院内に先端のCAD/CAMシステムを備えております。またセラミック治療にも注力しているので、実際にCAD/CAM冠を見て、説明を聞いて、色や強度に不安を感じられることがあれば、他の素材も提案させていただきます。
2023~2024年の診療報酬の改定により、CAD/CAM冠を保険適用できる幅が大きく広がりました。今まで、適用できずに断られた経験がある方も、一度お問い合わせください。
また保険適用の治療は、基本的にはどこの歯科医院で受けても費用は変わりません。当院では他院で入れられた銀歯をCAD/CAM冠に変えたいというご希望にも対応しております。
もちろんセラミック治療についても力を入れております。どの治療にするか迷われている方は、LINEでの相談フォームも用意しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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