2024.07.06
歯の根っこが折れる?歯根破折の原因と治療を解説
虫歯や歯周病のようにメジャーではないお口のトラブル「歯根破折」。患者様の中にも、なぜ歯根が割れてしまったのか分からないという方も多くいらっしゃいます。
当記事では、歯根破折の原因や症状、治療の選択肢をご紹介します。
「歯根破折」とは具体的にどのようなトラブルなのか
歯根破折とは、その名前の通り「歯の根っこが割れてしまう」という状態を指します。
前提として、歯は歯茎の上に出ている「歯冠」と歯茎に埋まっている「歯根」に分けられます。
通常、歯はよほどの衝撃が加わらない限り割れてしまうようなことはありません。
しかし、虫歯治療などで神経を除去している歯は血流や栄養が行き渡っていないため、とても脆く、壊れやすい状態になっているのです。
こうした状態の歯に起こりやすいのが「歯根破折」や「歯冠破折」と言われる問題です。
そういった歯は、強い衝撃以外にも普段の噛む力や歯ぎしり、食いしばりなどによって割れてしまうことも少なくありません。
歯根破折が起こると、歯茎に埋まっている部分が割れてしまうため、歯の機能や歯自体を維持できなくなってしまいます。
歯根破折は歯を失う原因の10%以上?
日本人が歯を失う原因として最も多いトラブルが「歯周病」であることは、多くの方がご存じかと思います。
歯周病が全体のおよそ40%を占め、次いで虫歯が30%以上を占めています。
では、虫歯の次に歯を失う原因となっているものは何でしょう。
実は歯根破折は、歯を失う原因としては3位であり、全体の10%以上にも上るとされています。
虫歯や歯周病のようにメジャーではないトラブルと思われるかもしれませんが、実際は「歯が折れてしまった」という経験がある方は少なくないのです。
歯根が割れるとどのような症状が起こる?
歯根破折は、多くの場合、神経を失った歯に起こりやすいとされています。
神経を失った歯は、基本的に痛みを感じることはありません。
しかし、歯根破折が起こると、神経を抜いたはずの歯に違和感を覚えるようになります。
歯が響くような感覚があったり、浮いているような感じがしたり、被せ物が外れやすくなったりすることも歯根破折の初期症状かもしれません。
虫歯のように激しい痛みが出ることが少ないため、中には違和感を覚えながらも放置してしまっている方もいらっしゃいますが、お口のトラブルは放置して自然治癒することは決してありませんので、一度歯科医院できちんと検査を受けるようにしましょう。
歯根破折を放置していることのリスク
歯根破折は、一刻も早い段階で治療を開始することが必要な状態です。
歯根破折が起こると、一週間程度で顎の骨にも影響を及ぼしてきます。
具体的には、顎の骨が溶けてしまうことで、本来であれば残せたはずの歯が残せなくなってしまうというリスクがあります。
歯の上部(歯冠)と違い、目に見えない部分での破折なので気づきにくいかもしれませんが、小さな違和感であっても気になることがあれば早めに歯科医院でレントゲン検査などを受けるようにしましょう。
歯根破折の治療方法にはどのようなものがあるのか
骨折であればある程度の自然治癒も起こりますが、歯の破折はそうもいきません。
一度割れてしまった部分は、きちんと治療を行わなくてはならないのです。
歯根破折の治療方法は複数ありますが、大きく分けると保存か抜歯かの二択です。
根の深い部分まで破折が達している場合には保存が困難になるため抜歯が必要になりますが、破折部分が浅い場合には保存治療が行えます。
口腔外接着法
口腔外接着法は、歯を保存するパターンの一つです。
破折している歯を一度抜いて、お口の外で接着した上で元の場所に戻す方法です。
口腔外接着法は、歯根破折の治療の中では、比較的成功率が高い方法として注目されています。
一方で、歯の破損が広範囲であったり、複雑なひび割れが起こっていたりする場合には、口腔外接着法での治療が困難になる場合もあります。
口腔内接着法
比較的小さなひび割れであれば、口腔内接着法という治療が適用できるかもしれません。
口腔内接着法では、ひび割れの部分を削り、治療用の接着剤を流して歯を修復していきます。
治療には精密な作業が求められるため、マイクロスコープなどの設備がある歯科医院で治療を受ける必要があります。
抜歯治療
破折が大きい場合など、保存治療が困難であると判断された場合には抜歯治療を行います。
抜歯自体は、親知らずなどと同様の処置となります。
抜歯を行う際には、事前にその後の治療方法についても考える必要があるでしょう。
歯根破折によって抜歯した際の選択肢
歯根破折による抜歯を行う際には、その後どのような方法で欠損を補うか考えなくてはなりません。
破折が起こった歯の箇所によっては必ずしも補う必要はありませんが、噛む機能や歯並びを維持するという観点からも、なるべく補綴治療(欠損を補う治療)を行うようにしましょう。
現在の歯科治療では、失った歯を補う方法としていくつかの選択肢があります。
まずはそれぞれの治療についてきちんと理解した上で、納得のいく方法を選ぶようにしましょう。
インプラント治療
インプラント治療は、健康な歯に負担をかけずに欠損を補える治療として注目されている方法です。
欠損箇所に直接人工の土台を埋め込み、上部構造の被せ物を装着していきます。
インプラントは、見た目も噛み心地も天然の歯に近い状態を再現できるというメリットがあります。
一方で、治療は自費診療に分類されるため、費用面については事前にきちんと確認しておく必要があるでしょう。
また、顎の骨が足りない場合などはインプラントの埋入が難しいため、事前に骨造成などの治療を行う必要があります。
ブリッジ治療
ブリッジ治療とは、欠損箇所に隣接する歯を削って、橋渡しのような形で被せ物を装着する治療方法です。
主に奥歯の治療に使用される方法で、保険診療の範囲内でも行うことができます。
前提として、歯根破折が起こった歯の両隣が健康な状態で維持できている必要があります。
健康な歯を2本、少しずつ削らなくてはならないというリスクがありますが、なるべく費用を抑えながら噛む機能を改善したいという場合におすすめです。
移植治療
移植治療とは、欠損箇所に他の歯を移植する方法を指します。
具体的には、抜歯しても問題がない親知らずを抜いて、欠損箇所に移植するというものです。
治療を行うためには、虫歯などのトラブルが起こっていない健康な親知らずが残っている必要があります。
入れ歯治療
従来の「失った歯を補う治療」といえば入れ歯治療でしょう。
歯根破折が複数あった場合など、部分的に歯を失ってしまった場合には入れ歯を用いて噛む機能を改善することも一つの選択肢です。
奥歯に装着する部分入れ歯であれば、見た目が気になるというリスクも少ないかと思います。
一方で、インプラント治療などと比べると噛み心地に違和感を覚えたり、噛んだ際に痛みがあったりするケースもあります。
まとめ
歯の根っこが割れてしまう「歯根破折」は、神経を失った歯に起こりやすいトラブルです。
特に、噛む力が強い方や歯ぎしり、食いしばりの癖がある方、ハードなスポーツをする方は注意が必要です。
なお、歯根破折が起こった場合には、早めに歯科医院で検査を受けるようにしましょう。
レントゲン検査などを行った上で、状況に応じた治療方法を考える必要があります。
「なるべく抜歯は避けたい」「抜歯後はインプラントがいい」など、治療方法に関してはしっかりと歯科医師と相談を重ねた上で決めていくことが大切です。
また、歯根破折の予防方法としては、なるべく強い力で咀嚼をしないように気をつけること、マウスピースを使用すること、歯並びや噛み合わせに問題がある場合はきちんと治療を行うことなどが挙げられます。
正しい治療と予防を行いながら、なるべくご自身の歯を維持していけるようにしましょう。