2024.02.13
顎の位置が変わると人はどう変わる!? 〜受け口編〜
今回ご紹介する患者様は、30年間、受け口の症状に悩んでおられました。
入れ歯のためにしっかり噛めない状態、人前で歯磨きをすることに抵抗感を覚える状態…そうしたお気持ちを30年間抱えて来られたのです。何度も何度も、さまざまな歯科医院に足を運び、その度に「顎の骨を切らないといけない」という診断を受け、負担の大きな治療になることを迷っていらっしゃいました。
本記事は、そんな患者様が当院で治療を受けられ、どのような変化が起こったのかをご紹介していきます。
そもそも「受け口」とはどんな状態か
「受け口」は、正式には「下顎前突」「反対咬合」と言います。
上の顎のよりも下の顎が前に出ている状態の噛み合わせを指し、大人の方だけでなくお子様にもよく見られる不正咬合の一種です。
受け口によるリスクとしては、前歯でものを噛めない、滑舌が悪くなる、顎が突き出て「しゃくれ顔」になってしまうなどが挙げられます。
健康面でのリスクだけでなく、見た目にコンプレックスを抱く方も多いのが「受け口」の特徴です。
治療前の患者様の状態について
今回の患者様の主訴は「受け口を治したい」「しっかり噛めるようになりたい」「入れ歯が無いようにしたい」というものでした。
患者様のご要望に応え、健康的で整った噛み合わせを実現するために、まずはしっかりとお口の状態を診査・診断していきます。
1.下顎が極端に噛み込んでいる
受け口の原因は人によってさまざまですが、今回の患者様は下顎が極端に噛み込んでいる状況でした。
こうした状況を「オーバーローテーション」と言い、具体的には、顎関節の軟骨を下顎の骨が乗り越えてしまっている状態です。
上記の状態によって下顎が前に突き出て目立ってしまうことが、患者様のコンプレックスに繋がっていました。
2.左右の奥歯の欠損
下顎の噛み込みが深くなっている要因として、左右奥歯の欠損が見られました。
奥歯には、ものを噛む以外に、お口全体の噛み合わせを支えるという働きがあります。
支えとなる奥歯を失ったことで、下顎のバランスが乱れ、噛み込みが深くなってしまっている状態でした。
欠損を補う方法として入れ歯を使用されていましたが、天然の歯と比べると噛み心地に違和感があり、そうした状態が患者様の「しっかり噛めない」というストレスになっている点も改善課題の一つでした。
3.噛んだときにお顔にシワがよる
噛み込みが深くなることで、いわゆる「老人顔貌」と言われるお顔の印象が強くなっていました。
受け口や噛み合わせが深くなる不正咬合(過蓋咬合)では、口元や目元にシワがよりやすくなり、実年齢より老けて見える傾向があります。
噛み合わせは、お口の健康や昨日だけではなく顔貌にも大きな影響を及ぼすのです。
受け口を解消するための治療を実施
上記のお悩みや課題を解消するために、今回はインプラントを用いて治療を進めていきました。
インプラントのメリットとしては
- 自然な見た目が再現できる
- 天然の歯に近い噛み心地が得られる
- 強い力にも耐えられる
などがあり、今回の患者様のお悩みを解消するのに適した治療法だと考えました。
1.欠損箇所にインプラントを埋入
初めに、失った歯を補うために奥歯のインプラント治療を行います。
入れ歯やブリッジではうまく噛めない、力がかかりすぎて破折してしまうという問題がありますが、インプラントなら健康な歯に負担をかけずに失った部分を補えるため、奥歯の治療にも適しています。
奥歯の欠損を補うことで、左右両方、しっかり噛める状態を作っていきます。
2.インプラントで噛み合わせを支える「咬合支持」を確立
奥歯をインプラントで補うことで、噛む機能だけではく、お口全体の噛み合わせを支える「咬合指示」も確立することができました。
咬合支持とは、簡単に言うと上顎と下顎のバランスを保つための支柱のようなものです。
奥歯の欠損で失われていた咬合指示をインプラントが補い、上下のバランスが整うことで、受け口が大きく改善されました。
3.噛み合わせを高くすることでオーバーローテーションを解消
噛み込みが深くなっていた状態は、インプラントで高さを調整することで改善していきます。奥歯にインプラントが入ることで、噛み合わせの高さが安定し、目立っていた下顎が正しい位置へ移動されました。オーバーローテーションが解消されたことで、全体的なお顔の印象にも大きな変化をもたらしました。
治療後のお口とお顔の変化
では、今回の治療を経て、実際に患者様にどのような変化が起こったのか見ていきましょう。
治療後に患者様から、このようなお言葉をいただきました。
「普通に笑える!」
「若返った!」
「職場の方と同じ場所で歯磨きができる!」
「なんでも食べられるようになった!」
このように長年受け口に悩んでおられた患者様が、輝くような笑顔と健康的な歯並びを実現し、喜んでくださることは歯科医師にとってこの上ない喜びです。
「普通に笑える!」噛み込みがしっかり整い、受け口が解消
左右の入れ歯をインプラントに替え、高さを調整することで極端に噛み込んでいた下顎を正しい位置へ移動させることができました。
その結果、受け口が大きく解消され、自然な笑顔が作れるようになりました。さらに今回の治療は、そういったコンプレックスの面はもちろん、機能面でも大きな改善を得られました。深く噛み込んでいる状態が治ると、全体的な噛み合わせが安定します。その結果、普段のケアがしやすくなったり、顎への負担が解消されて顎関節症のリスクが軽減されたりと、健康面でも大きなメリットが得られるでしょう。
「健康な状態を維持しながら笑顔で過ごせる」ということは、患者様にとっても、とても重要なことだと言えます。
「若返った!」人が変わったような明るい笑顔
受け口の解消は、お口の環境や機能の改善はもちろん、お顔の印象にも大きな変化をもたらしました。
突き出ていた下顎の状態を安定させて噛み合わせを正しく整えたことで、筋肉のバランスもよくなり、シワやお顔のたるみが改善されたのです。特に噛み込みが深いと目元にシワが寄りやすくなり、老人顔貌と呼ばれる見た目になってしまうことがあります。そういった状態を解消したことで、今回の患者様も治療後には5歳〜10歳ほど若返ったような印象を受けました。
もちろん、矯正治療やインプラント治療で実際に若返ることはありませんが、周囲に与えるイメージは大きく改善されるでしょう。
「職場で歯磨きができる!」長年のコンプレックスが解消
歯並びや噛み合わせにコンプレックスを抱いている方は「人前で歯磨きをすることに抵抗がある」「口を開けるときに人目が気になってしまう」というお悩みを抱えています。
今回の患者様も、職場で歯磨きをすることができず、わざわざ人目につかない場所で歯磨きをしていました。しかし、そんな状況も、今回の治療で大きく変化しました。奥歯が支えになって下顎の極端な噛み込みが解消されたことで、お顔全体のバランスが整い、お口を開けることに抵抗感を覚えることがなくなったのです。
長い間悩んでいた症状を改善することは、ご自身のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)=生活の質を向上させることにも繋がります。充実した人生、快適な日々を送るためにも、ご自身のお口に合った方法で歯並びや噛み合わせのお悩み、コンプレックスを解消していきましょう。
「なんでも食べられる!」口腔機能の改善
患者様の主訴にもあった「入れ歯を使わず、なんでも噛めるようになりたい」というお悩みも、今回の治療で大きく解消されました。入れ歯を使用していた部分にインプラント治療を行うことで、よりご自身の歯に近い噛み合わせを実現できたためです。
インプラントは、数ある補綴治療の中で最も天然の歯に近い噛み心地が得られるというメリットがあります。インプラント治療の土台となるチタンが生体親和性に優れているため、骨と強く結合し、奥歯を噛む時の強い力にも耐えられるようになります。
「なんでも食べられるようになりたい」「しっかり噛みたい」という方にとって、インプラント治療による機能改善は、見た目の改善以上に大きな価値があると言えるでしょう。
まとめ
今回の患者様はインプラント治療を行うことで症状が解消されましたが、受け口の治療は、場合によっては顎の骨を切るなど、外科処置を伴う大掛かりな治療になるケースもあります。
大掛かりな治療になればなるほど、患者様は治療を迷ってしまうでしょう。
「どの治療を受けるべきなのかわからない」「何が正しい情報なのか判断ができない」と悩んでしまう方もいらっしゃるかと思います。当院では、そういった患者様にこそご自身のお口の状態を理解し、自分に合った治療を選択いただきたいと考えています。
デンタルIQを高めることで、患者様が正しい判断、納得のいく治療を選択できるようお手伝いをしていきたいと思いますので、お口のことでお悩みの方、治療について迷っている方は、ぜひ「安岡デンタルオフィス」までご相談ください。
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『顎の位置が変わると人はどう変わる!? 〜受け口編〜』