2023.07.26
先天性欠如歯はなぜ起こる?インプラント治療で保険適用になるのは本当?必要な条件と治療法を徹底比較!
先天性欠如歯とは、本来生えてくるべき永久歯が生えてこない先天性の病気を指します。
先天性欠如歯には乳歯の段階から歯が生えてこないケースと、乳歯はあるものの永久歯に生え変わらないケースがあります。
あまり聞き慣れない病気のように思うかもしれませんが、実は約10人に1人の確率で発症すると言われているくらい身近な疾患です。
この記事では先天性欠如歯の原因や放置するリスク、インプラントをはじめとする治療法について紹介します。
先天性欠如歯の原因
先天性欠如歯は成長段階で「歯胚」と呼ばれる永久歯の芽のようなものが作られないことで発症しますが、その原因は遺伝や発育期の栄養不足や障害、母親の妊娠中の飲酒喫煙などさまざまな可能性があると言われています。
先天性欠如歯を放置するリスク
先天性欠如歯にはいくつかのデメリットがあります。そもそも、本来あるはずの歯がないということは、周囲の歯にかかる負担が大きくなるということです。
その結果として、歯並びや噛み合わせが悪くなってしまったり、見た目にも大きな隙間がコンプレックスとなってしまったりするでしょう。また、咀嚼の際にも歯が機能しないため、胃腸への負担リスクも大きくなってしまいます。
先天性欠如歯の発生確率が上がる特徴として、お子様の癒合歯があります。癒合歯とは、2本の歯が1本として生えている状態で、小さなお子様でも歯科検診や乳幼児健診で見つかることがあります。
その場で治療をする必要はありませんが、生え変わりのタイミングで先天性欠如歯が確認された場合には、早めに治療を行って歯並びや噛み合わせが乱れないように注意する必要が有ります。
癒合歯のお子様は生え変わりのタイミングで歯科医院に相談しましょう。
先天性欠如歯のインプラント治療で保険が適用される?
インプラント治療は、失った歯を補うための治療である一方、審美治療として扱われる診療項目でもあります。そのため、基本的には保険適用されることはありません。
しかし、先天性欠如歯に関しては一定の条件を満たしている場合、2020年4月より公的医療保険の適用が可能となりました。また2024年4月に行われた診療報酬改定に伴い、適応条件が以下のように拡大されました。
先天性欠如歯のインプラント治療で保険が適用される条件
- ブリッジや入れ歯では咀嚼機能の回復が困難であること
- 先天性欠損歯が6本以上ある
これまでは「連続した3分の1顎程度以上の多数歯欠損」の場合のみ、インプラント治療は保険適用となっていました。しかし、今回の改定で適用条件が「3分の1顎程度以上の多数歯欠損」となり、連続していなくても6本以上の歯の欠損があれば、保険適用が認められるようになりました。
先天性欠如歯のインプラント治療で保険が適用されない場合
一方で、先天性欠如歯である場合でも以下のケースの場合は保険適用外となります。
- 欠損が6本に満たない
- 歯列矯正など他の治療法で欠損を補うことができる
先天性欠如歯の治療方法は、インプラントだけではありません。隙間を埋めるために矯正治療を行っている方、入れ歯を使用している方もいらっしゃるでしょう。
基本的に欠損が少数の場合や他の治療で歯の機能が取り戻せている場合には、インプラント治療時に保険適用外となります。
保険適用でインプラント治療を受けられる施設は?
先天性欠如歯で悩んでいる方の中で、可能であれば保険適用のインプラント治療を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった場合は、初めに保険診療で治療できる病院を探す必要があります。
保険適用で先天性欠如歯のインプラント治療ができる施設の条件は以下の通りになります。
- 歯科または歯科口腔外科を標榜している保険医療機関であること
- 当該診療科にかかわる5年以上の経験および当該療養にかかわる3年以上の経験を有する常勤の歯科医師が2名以上配置されていること
- 病院であること
- 当直体制が整備されていること
- 医療機器保守管理および医薬品にかかわる安全確保のための体制が整備されていること
- 当該療養に必要な検査機器を設置していること
上記の条件を満たしている医療機関であれば、公的医療保険を適用した治療を行うことができます。
2024年11月現在、大阪府下で対応している医療機関は以下の2施設になります。
先天性欠如歯のインプラント治療にかかる費用
保険適用の治療は原則3割が自己負担となりますが、治療の範囲などによっては高額な費用になることもあります。「高額療養費制度」を利用できる場合もありますので、治療開始前のカウンセリング時に歯科医院で相談してみましょう。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、医療機関や薬局で支払う医療費が月初から月末までの1カ月で上限額を超えた場合、加入している公的医療保険へ申請することで超えた金額が還付される制度です。上限金額は年齢や所得により変わるため、具体的な金額は厚生労働省のホームページで確認する必要があります。
保険適用外の場合、インプラント1本あたりの価格は、およそ30~40万円前後が相場となります。保険適用外のインプラント治療は、高額療養費制度は適用できません。
先天性欠如歯のインプラント以外の治療法と費用目安
インプラント治療はメリットの大きな方法ですが、費用面を考えるとそれ以外の選択肢もあった方が安心です。先天性欠如歯の治療の選択肢としては、インプラント治療以外にも3つの治療方法があります。
治療名 |
治療内容 |
メリット |
デメリット |
料金 |
歯列矯正 |
マウスピースやワイヤーなどの矯正装置を用いて、先天性欠如歯で空いてしまった隙間を目立たないように歯列のバランスを整える。 |
・人工物を入れずに、天然歯のみで治療できる場合も多い。 |
・治療終了まで1年以上の期間がかかる場合が多い |
・ワイヤー矯正:約60~100万円 ・裏側矯正:約80~150万円 ・マウスピース矯正:約80~150万円 ※子どもの矯正は30~80万円と、成人矯正に比べると取り組みやすい費用である場合が多い |
ブリッジ治療 |
先天性欠如歯で空いた隙間の両隣にある歯を削って、失った歯の部分に橋を架けるように人工歯を被せる |
・セラミックを用いるので体に優しい ・外科手術を行わないので治療時間もあまり要さない。 |
・健康な歯を削らなくてはならない ・削った箇所が虫歯になりやすい ・治療箇所の平均寿命が7~8年しか持たない |
・ハイブリッドセラミック:4万円~8万円 ・オールセラミック:8万円〜13万円程度が相場 |
部分入れ歯 |
取り外し式の差し歯でも抵抗がないという場合には、部分入れ歯を装着して歯の隙間を埋める方法もあります。 |
・入れ歯は比較的安い値段で治療できる ・治療期間も短く、通院の負担が少ない ・前歯でも奥歯でも治療が可能。広範囲にわたって対応できる ・骨がなくても使用できる |
・天然歯と比べると噛む力が極端に弱くなってしまう ・口腔内は日々変化しているため、しばらく経つと入れ歯が合わなくなってしまう |
費用は、安いものであれば4千円〜1万5千円前後で治療を行うことが可能 |
インプラントが先天性欠如歯の治療に選ばれている理由
保険が適用されない場合、インプラント治療の費用はかなり高額となります。
それでもインプラント治療を選択する患者様が多いのには、いくつかの理由があります。
他の健康な歯を傷つけない・痛めない
インプラントは、欠損箇所に直接土台となるインプラント体を埋め込み、その上に上部構造を被せます。ブリッジ治療のように隣り合う歯を削って支柱にしたり、入れ歯のように他の歯にワイヤーを引っ掛けて固定したりするなどの必要ないため、他の健康な歯に負担を掛けることがほぼありません。
噛む力が天然歯と変わらない
インプラントの土台は骨であるため、天然歯と同じくらい硬度があります。そのため、硬いものもしっかり噛んでおいしく食事を楽しみたいという方にとっては、インプラントはぜひ選びたい治療方法と言えるでしょう。
お口に対するコンプレックスが少なくなる
先天性欠如歯の場合、歯の隙間が気になっているという方は少なくないでしょう。とはいえ、なかなか治療方法を決めきれない、入れ歯に抵抗があるなどの理由でコンプレックスをそのままにしてしまっている方も多いかと思います。
インプラント治療なら入れ歯のように目立つこともなく、天然の歯に調和した治療が可能です。
子どもにインプラント治療はできない
小さなお子さんに先天性欠如歯があると分かった場合、寿命が長いインプラント治療をしたいと思われる保護者も多いでしょう。
しかし、インプラントはあごの骨に直接インプラントを埋め込む治療法であるため、あごの骨が成長途中の子どもには適用できません。あごの骨が成長することで、インプラントの位置がずれたり抜け落ちてしまったりすることが考えられるからです。
一方、矯正治療はあごの骨が成長途中で比較的やわらかい子どもの場合、歯が動かしやすいなどの利点があります。そのため、子どもの先天性欠如歯の治療では矯正治療をおすすめする歯科医院が多くなっています。
江坂で先天性欠如歯の治療をするなら安岡デンタルオフィスへ
本来生えてくるべき歯が生えてこない「先天性欠如歯」にはいくつかのパターンがあります。いずれの場合も、歯がない状態を放置しておくとお口全体にさまざまな問題を引き起こしてしまうことがあります。
「もしかすると、歯がないかも?」と何かのきっかけで気づかれた方は、早めに歯科医院へ来院ください。当院では、まずは患者様と一緒にどんな治療でお口の中を改善していくかを考えていきます。
今回の記事で紹介したインプラント治療は、自然な見た目と噛み合わせ、天然の歯同様の噛み心地が得られる治療方法です。当院では精密で安全なインプラント治療を提供できるよう日々の研鑽に力を入れています。また、治療後のメンテナンスに通いやすい環境を整えることで、患者様がより長い期間、おいしく食事をできる口腔内を維持できるよう努めています。
気になる症状があれば、お気軽にお問い合わせください。