前歯の叢生(そうせい)・すきっ歯の治療法の比較
前歯の叢生(歯並びがデコボコの状態)やすきっ歯というのは、日本人の多くの人に見られる歯並びで、「前歯の部分だけでもなんとかしたい」、と思っている人は結構多いものです。そのような場合、前歯の歯並びを解決する方法として、いくつかの治療法が存在しますが、それぞれにメリットやデメリットがあり、治療を選択する前によくその辺を踏まえておく必要があります。それぞれの治療法のメリットやデメリットについて見ていきましょう。
ダイレクトボンディング法
ダイレクトボンディング法は、前歯のすきっ歯治療に対して行われることがあります。歯と歯の間の間隔が広い部分に、コンポジットレジンという歯と同じ色をした歯科用プラスチックを盛り上げ、専用の光を照射して固める、という方法です。すきっ歯の治療方法としては最も手っ取り早く解決できる方法です。
メリット
歯の上に直接材料を盛り上げ、固めるという方法であるため、「歯を削るというダメージを避けられる」というのが最大のメリットだと言えます。また、一日で治療を終わらせることができる、比較的短時間でできる、というのも、手っ取り早くすきっ歯を解決したいという人にとっては大きなメリットです。また、他の治療法に比べてリーズナブルな値段で治療を受けるのも魅力です。
デメリット
材料を歯の上に盛り上げている状態であるため、月日が経ってくると境目に色がついてきて段差が目立ってしまったり、材料そのものが黄ばんできたり、というようなことが起こってきます。また、材料自体が取れてしまうこともあります。そのため、状態を美しく保つためには、治療後は定期的に状態をチェックし、随時新しくやり直しを行う必要性があります。また、もともと隙間だった部分まで歯の面積が広がるため、歯と歯の隙間は埋まっても、歯が幅広になりすぎてしまうというような、新たな問題が起こる場合もあります。そして、詰め物の形作りや色選びは歯科医師の技量やセンスによっても出来栄えが左右されるため、必ずしも満足いかない結果に終わることもあります。
ラミネートベニア法
この方法もすきっ歯に対して行われることがあります。歯の表面を薄く削って型を取り、その形に合うように薄いセラミックを付け爪のように貼り付けます。
メリット
セラミックを被せるのに比べ、削る量が圧倒的に少ないというのは大きなメリットだと言えます。また、セラミックは傷がつきにくく、変色しないので美しい見た目を保ち続けることができます。
デメリット
削る量は少ないですが、健康な歯を削ること自体がデメリットだとも言えます。また、ダイレクトボンディング同様、歯の幅が広くなって、審美的に満足がいかない場合もあります。そして、薄いセラミックですので、硬いものを噛むと欠けてしまう恐れもあり、その点の注意が必要です。
セラミッククラウン
この方法もすきっ歯に対して行われることがあります。歯の表面を薄く削って型を取り、その形に合うように薄いセラミックを付け爪のように貼り付けます。
メリット
歯が斜めになっていたり、ねじれているようなケース、虫歯ができていたりすでに大きな詰め物が入っているケースでも、セラミックのクラウンを被せることによって、極力バランスのとれた、きれいな見た目の歯、歯並びにすることが可能です。
デメリット
叢生の場合、歯が並ぶスペースが足りない状態ですので、場合によってはどこかの歯を抜いてバランスをとって被せていくことがあります。また、大幅に削らなければならないことも少なくなく、歯の中に入っている健康な神経を取り除かなければならないこともよくあります。歯の傾きを大きく変えてしまうようなケースでは、歯根の傾きと歯の傾きが違うことで、歯に異常な力がかかって歯を弱めてしまうこともあります。
ワイヤー矯正で部分矯正
ワイヤー矯正を前歯だけに行う方法です。
メリット
全体的に行う矯正治療に比べ、期間が短く、費用を抑えることができます。
デメリット
装置が目立ってしまい、違和感や歯が動く際の痛み、装置が粘膜に当たる痛みが起こってきます。また、治療期間は半年以上と、どうしてもかかってしまいます。
iGOシステムによるマウスピース矯正
透明なマウスピース矯正装置を使って、段階ごとにマウスピースを交換しながら歯並びを整えていきます。
メリット
目立たず、違和感や痛みの少ない取り外し可能なマウスピース矯正装置によって、ストレスを最小限にした矯正治療が可能です。歯を傷つけることもなく、体にも害を及ぼさないため、健康的で自分の歯の本来の美しさを生かして、きれいに歯を並べることができます。
デメリット
前歯の軽度の不正咬合にしか対応できません。叢生やすきっ歯の程度がひどい場合、奥歯の噛み合わせに問題がある、顎の骨の形や大きさに異常がある、というような場合には、他の矯正治療で治療を行う必要があります。